アリアの箱庭 ~The Miniature Garden of Aria~



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愉快なサンタクロース



inserted by FC2 system 「トナカイよぉ」
「なんです、サンタさん」
「なんでさあ、毎年毎年こうもプレゼント配らなきゃいけないのさ」
「それは、この一年いい子にしていた子供たちへのご褒美をあげるためですよ」
「なんでさ、お前は毎度毎度そんなありもしない妄想に取りつかれたような発言するのさ。いい子にしてた子供にあげるプレゼント? それが仕事ならこんな大がかりな組織なんてできないぞ。いい子にしてた子供なんて恐ろしいくらいに少ないはずだ。そうだな、せいぜい各国の子供の人口の1パーセントくらいのもんだぞ」
「サンタさんこそ、なんでそんなに現実味のある話するんですか。そんなに少なくないですよ、もっといるからこそこんなにも巨大な組織になってるんでしょ」
「巨大も巨大、半端じゃない大きさだぞ。国連によって組織された秘密組織。各国に支部があって、その中でその国の細部にそれぞれ部署があるんだ。これが巨大じゃないってことの方が恐ろしいね。インターネットも驚きの情報網だよ。子供の欲しいモノがちゃんと1月前にはリストアップされてるしな」
「まあ確かにそうですね。そのおかげでこうしてちゃんと欲しいモノを子供たちに届けれるんですからいいじゃないですか」
「欲しいモノ? それは違うな。お前は知ってるだろ。うちは予算が足りないくせに、夢見るガキ共が多いせいで、欲しいモノを与えてあげられるのはいい子ランキングの上位120人だけだぞ。それ以外は安物で何とかしてるのさ」
「そんな夢のないことを。知ってても口にはしないでくださいよ。貴方はまがいなりにもサンタクロースですよ」
「なりたくてなったわけじゃないさ。ガキは昔から嫌いでね」
「でも妻子持ちでしょ」
「お、現実味あること言うなトナカイ」
「おっと私としたことが。でも別にサンタクロースに家族がいてもいいんじゃないですか?」 「別にかまわないぞ。サンタに家族がいようが、プレゼントさえ届ければガキどもは馬鹿騒ぎするんだからな」
「酷い言い様ですね」
「それこそ事実じゃないか。それに一般にソリに乗ってると思ってるけど、そんな非現実的なことがあるわけないだろ。ただでさえそりが重いのによ、そこに地域の子供用のプレゼントを乗っけるんだぞ。郵便配達の日じゃないくらいに重いんだよ。だから最新技術を駆使した非可視・ステルス装甲のヘリコプター、それもプロペラの音が殆どしない奴に乗ってるんだからな。それでも、空を飛ぶソリよりもまだこっちの方が現実味あるね」
「そりゃあ、まあ実際にそれで仕事してますし」
「そのあとも大変だ。ヘリコプターから降りる方法がなぜか縄梯子なんだ。落ちたらどうすんだよ」
「本当に映画じゃないんですからね。他に方法はなかったんですかね」
「窓の鍵を開けていてくれているだけで恩の字だよ」
「そうですか?」
「降りるのは死ぬほど訓練してるからなんてことないんだよ。もし鍵が閉まってたら、硝子戸を泥棒よろしく開けなきゃいけないんだ、時間のロスだよ」
「どんどん社会的に存在できなくなっていきますね」
「いや、実際そんなに儂らの存在は公にならないぞ」
「そうなんですか?」
「当たり前だ。儂らは秘密裏に組織された組織の人間だぞ実生活ではみんなサラリーマンとかそんな感じだぞ」
「初耳です」
「お前が訊いている必要があるかといわれると、ノーだからな」
「たしかに」
「……よし、これでどのくらいだ」
「配達物の63パーセントですね」
「まだまだ頑張らないとな。とりあえず休憩だ」
「そういえば、サンタさんって一人称が"儂"ですけど、実年齢ってどの位なんですか?」
「ん? ああ、儂――いやお前は俺のパートナーだからな言ってもいいか。俺は35だよ」
「妻子持ちとは知ってましたけど結構若いんですね」
「そうか? まあうちの部署じゃ若い方だな」
「上はどのくらいの方が?」
「この仕事は体力と頭を使う仕事だからな。あんまり年老いたら退職だな。今のところは、48が最高だな。昔は伝説のサンタってのがいて、57でサンタやってたらしいぜ」
「ものすごい老人ですね」
「真のサンタクロースだったんだって。音もなく現れて子供に微笑みかけ、音もなく去っていく――そんな人だったそうな」
「まさにサンタの鏡ですね。技術力が今ほどでない当時にそんなことしていたとは、サンタさんも見習ってください」
「いやだよ、そんなのただの不法侵入者じゃないか」
「それを言っちゃおしまいですよ」
「……さて、準備しますか」
「はいはい、あと少しですよ」
「はぁ――たる」
「文句言わずに頑張ってください。ほら子供たちが待ってますよ。余りに待ち遠しくて、ワクワクしすぎて眠れなくなるくらいに待ってますよ」
「それじゃあ、見つかるから困るんだよ。それがないようにするために、親にはちゃんと早めに寝かせるように言ってあるんだよ。最近のガキは夜更かしするからな」
「そうですね。早く配らないと次の日にボランティアで配ることになりますからね」
「あと、給料70パーセントにされる」
「厳しいですね」
「公に出ないことをいいことに俺達を酷使してやがる」
「世知辛い世の中ですね」
「全くだ。職業は嘘つかなきゃいけないし、給料は微妙だしな」
「ご家族には何の職業についてることになってるんですか?」
「研究者だよ。俺は博士号もってるし、前も研究者。とりあえず役職が変わったとだけ伝えてある」
「そうなんですか。その肉体で技術者とは驚きです」
「失礼な。確かに研究員当時はヒョロヒョロの見たまんまの研究者でいかにも運動しません、みたいな感じだったんだぜ。それでも、ここに連れてこられて訓練させられたら誰だってこうなる」
「確かに、みなさん素晴らしい肉体をしてます」
「だろ。なんでも自衛隊とかと同じような訓練なんだとよ」
「もうなんだかサンタというより戦闘員ですね」
「だな。いろんな乗り物の免許取らされるし」
「このヘリも運転なさりますよね」
「当たり前だろ。1人に1機、1地域だからな」
「大変ですね」
「何他人事みたいにいってるんだ。お前も俺のパートナーとして一緒に行動するんだろ?」
「そうですね。でも私は年に一度しか動きませんしね」
「よくやっていけるな」
「ちゃんと見てもらってますから。そういうサンタさんこそ、クリスマス以外は何してるんですか」
「俺は訓練と研究だよ」
「ちゃんと研究してるんですね」
「当たり前だ。訓練だけなんてごめんだし、何もしないのもごめんだ」
「それで研究ですか」
「みんな同じようなもんだよ。研究とか新人の育成とか」
「どんどん会社みたいになってますね」
「お前もどんどん現実味を帯びてきたな」
「そんなことないですよ。私はいつだって夢見る子供たちの味方。ロマンティシズムにあふれるトナカイです」
「ガキ臭い妄想に取りつかれた貧弱な獣にしか思えん」
「ひどっ」
「よし、あとどれくらいだ」
「……あと12パーセントです」
「よし、もうひと頑張り」
「子供嫌いな割に頑張ってますね」
「金のため、だ」
「もっとファンタジックに考えましょうよ」
「無理だね。そんなことができる頭はどっかに捨てたよ」
「でもサンタさん、案外子煩悩なんじゃないですか?」
「そんなことないよ。なんも買い与えてないし」
「休みの日とか子供と遊んでるんでしょ?」
「まあな。それでもキャッチボールとかだけだよ」
「そうですか。でも自分の子供とは遊ぶんですね」
「そりゃあ、俺の血を受け継いだ子供だ。他のガキとは違うさ」
「親ですねぇ」
「茶化すなトナカイのくせに」
「いえいえ。それで、お子さんはクリスマスプレゼントは何がほしいと?」
「ん? 今テレビでやってる、戦隊モノのオモチャだよ」
「それで、それがプレゼントされるんですか?」
「知らないよ。俺の管轄と違うからな。自分の子供がいる地域は担当できないようになってるんだ。ひいきのないようにってな」
「それもそうですね。サンタは公平でないと。子供たちのヒーローですからね」
「夜中に空飛んで不法侵入して、物置いていく爺さんがヒーローなんて俺は認めたくないね」
「その爺さんが貴方ですよ」
「酷い話だね。俺は、まだ35だって言うのに」
「若いサンタクロースは変でしょ」
「いいだろ。世の中、父親がサンタだとか恋人がサンタだとか言われてんだから。まあ恋人はどうでもいいとしても父親がサンタってのは俺みたいな子持ちなら頷けるな」
「そうですね。管轄外ですけど」
「……よし。これで全部だな」
「はい。お疲れさまでした」
「じゃあ、また明日な」
「はい。ご家族と楽しいクリスマスイヴを」
「ありがとよ」



「よ、メリークリスマス」
「おはようございます」
「今起きたのか」
「さっきまで出発前の最終点検を受けてたんですよ」
「そうか。調子は?」
「上々です」
「よし、行くぞ。そろそろ10時だ」
「はい。乗ってください」
「管制塔、こちら日本支部本州部近畿課――3号機です。離陸許可を」
『よし。離陸を許可する。――夜中に帰れよ』
「……そのつもりです」
「それでは、プレゼント配達用特殊装甲ヘリコプター3号機――REINDEER、離陸します」
「よし、さっさと終わらせていい気分で寝るぞ」
「子供たちの夢のために今年も走りますよ」
「よし、事前に指定した通りに飛んでくれ。ついたら俺――儂が即座にプレゼントを置いてくる」
「了解!」
「さて、今年も世界中のみなさん――」
「「メリークリスマス!」」


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